2012年07月17日

第11回 縄文自然体験学習 野びと塾 活動報告

第11回 縄文自然体験学習 野びと塾 活動報告

日時:2012年7月14日~15日
場所:旧楢尾小学校と近隣ガレ場 外100%
活動:キャンプ、植樹、水源調査、村人と交流、焚火等
天候:曇りのち雷雨、のち大晴れ
目的:遊ぶ
参加:子供34名、大人8名

活動報告:
夏野びと塾の舞台である、旧楢尾小学校の蛇口から突然、水がでなくなった。夕食をたべおわり、食器をみんなで洗うときだったから、みんな焦った。ただでさえ水2ℓの制限をつけているし、あとは焚火の明かりだけになる。私はすぐに小学校上のお宅に訪問した。

上のおじさんは、すぐさま、それは困ったと、自分の家庭用水の、山林からの沢水をホースでつないで、小学校に通じるタンクに注いでくれた。おじさんは、水がでなくなった原因を話してくれた。

昨日の大雨による土砂崩れが原因であることがわかった。小学校の貯水タンクにつうじる沢がせき止められたのだ。そこに60年住むおじさんは言った。昔はこんなことなかったんだよ。

最近の「自然界からのメッセージ」は、誰もが気づけるレベルになった。大雨、大風、そして土砂崩れ。おまえら人間いいかげんにしろ。そんな声が聞こえてくる。大音量のメッセージは、まだ人類が滅びたくないのであれば受けとめろという類のものだ。野びと塾が植えた300本の苗木が、ことごとく鹿やウサギに食べられたこと。大量発生したクラゲが、ゲンパツ再稼動を阻止しようとしたニュース。これらは、自然界・動物界からのメッセージに他ならない。私たちは、これらの「言葉ではない」メッセージを、どのように捉え、そして形にするべきか。人間界は、いま、試されている。

今夏11回目をむかえた縄文自然体験学習 野びと塾。
夕食準備。約30年ぶりに復活した鉄鍋を、やぐらにつるして焚火で調理した。竹棒で鍋をかきまわす。料理の味とは、おもいやりに比例する。仲間を大切にすること、家族に教えてあげること、本当のことを言うこと。普通だったことが、とてもむずかしい時代になった。なぜだろう。

縄文時代は1万年つづいた。その後の「弥生時代」は300年しか続かなかった(この解釈には多数説有り)。年表をみると、奈良時代から70年サイクルで終わっている歴史・価値観が非常に目につく。これらと比べて縄文時代はケタが違う。では、なぜこれほどまでに縄文時代が長く続いたのか。逆に、なぜ、弥生以降はスパンが短くなっていったのか。これらの「難しい問い」を、焚火を囲んだ子供たちに問うてみた。すると、あっさりその答えを何人もの生徒が答えてくれた。争うこと、奪うこと、根底には人間の身勝手さが左右するということだった。

子供たちの意見をさらに集約すると、全員が平等か、そうでないかに、時代や生命の長短が現れるのだという。人間にも、動物にも、自然にも、おもいやりを持てるか否かに私たち生命活動の運命がかかっているのだ。自然の上に大いなる(とても偉大)という意識が当たり前だった縄文人は、人間関係にしても、墓地の大きさから格差や差別をしていなかったことがわかっている。縄文どころか明治以前の記憶がまったくない私たちであるが、小学生はそんな意識、記憶、本質を知っている。

ここのところ情報過多で、それらの意識はあっても、活動の場を他の価値観に独占されてしまっている。活動機会を作って提供することは私たち世代の責任で、今後の生活をこれ以上苦しまないためという、私たち生活にも最低条件のこととして反映される。たとえば今回の水がそれである。

夜半、12時ごろまで起きている生徒もいた。にも関わらず、朝4時には半分の生徒が起きていた。テントをたたきつける大雨に眠れなかったという。雨は、夜中2時~8時までつづいた。視界20mの大雨も多々。梅雨がさよならをした。

野びと塾で楢尾集落を訪れるときは、決まっていつも天気が荒れる。大雨、大雪、嵐、そして土砂崩れ。これはなぜか?答えはひとつ。自然界からのメッセージを受け取りにきている子供たちのためだ。自然界は必ずしも平等ではない。そして、なにより自然という自分自身のためである。学習プログラムできている生徒たちへの「洗礼」は、多くの気づきをくれる。過去を洗いながして礼をいわれるのである。礼にもいろいろある。私たち人間がしてきたことへの礼はとても厳しい。山体に穴を開けつづける人間に、叩きつける大雨というメッセージ。逆に、焚火の時間、そして二日目の自由行動では天候に恵まれて、生徒の一人が、自然さんに良いことしたから喜んでくれて星空みせてくれたんだよ!と言った。じつは初日は、山が喜ぶことをした。岩と石しかなかった標高800mのガレ場にたくさんの植樹をして、種をまいた。種をまくことは、山の斜面の保水力をあげるだけでなく、枯れ葉が草花にひっかかり土ができる、そこから植樹をしないと普通の樹木は根を張らない。今回植えた苗木はコナラ、カシ、モミジ、ヤマザクラ、タブノキ。すべて根を深く張る植生だ。頻発する土砂崩れの多くは、根を浅く張る針葉樹や竹林でおきている。表面を飾る山から深部まで到達する山へ。これが生命・水を循環させる。

さて、朝方からの大雨。焚火の炎が思うようにいかない中での朝食作り。4時間も掛かった。困難に背を向ける大人になってほしくないから、大雨で、いまの自分を超えてほしいと思った。決まって二日目はさらにおいしいものができあがる。

二日目はすべて子供たちの意思に任せて活動をおこなった。村を歩く班では、村人のお宅で水筒に水を補充する生徒や、昼食の玄米大豆オニギリに塩をかける生徒など、甘えるところは甘える、そして挨拶だけは忘れずに。モノが溢れた代わりに絶滅寸前のコト。本物だけは廃れさせることのないよう努めたい。

挨拶からはじまる、みんなが喜ぶこと。動物や自然も喜ぶこと。みんなからみんなにありがとうと言われることを一人一人が、一日一度する。

それがどんな勉強でも、学習は、普段の外遊びが直結してモチベーションに表れる。たとえば「座談会」の漢字の意味がわからなければ、それをイメージして遊ぶ。たとえばSchoolのつづりがわからなければローマ字をイメージして遊ぶ。窓がふたつ、hは椅子で、lは扉というふうに、イメージから遊んで綴りを覚える。勉強みたいに暗記するか、遊びで覚えるか、どちらが楽しいかは一目瞭然である。楽しくないと続けるだけ苦痛だ。これらのイメージ遊びは普段の外遊びから創造される。そのイメージは、誰かが植えつけるものでは長続きせず、自分で得ることで後々まで生きてくる。すべてを遊び心(イメージ)でやることで、世の中すべてを楽しめて、しかも効率よく作業できる。作業という言葉すら当てはまらない。仕方ないという気持ちがなくなる。あえて苦しい道がたのしくなる。気持ちの持ちようで苦楽が分かれる。それには普段から外遊びでイメージを培うことが必須である。なにもないところから遊びを創出する。遊べ。遊べ。被災地の仮設住宅で出会った方々を思い出す。気持ち次第でその人の生活環境がまったく違っていた。今回の野びと塾では、班分けも係りも、二日目の活動すべても子供たちのイメージと判断に任せた。簡単そうにみえるイメージも私たちの受けてきた教育をみるとトレーニングが必要だから、結果はすぐにでないかもしれない。日頃から外遊びを忘れずイメージを伸ばしてあげることに執着したい。感じること。想像は創造につながる。これから新しい時代・価値観が近い将来必ずやってくるから。

沢の水を小学校のタンクに貯めおわると、焚火をかこんだ43名の座談会が始まった。まず私から今回、水が不使用になった原因を話した。そしてみんなに質問をした。「自然界からのメッセージを、普段から受け取っているひと居るかい」すると、ほとんどの生徒が、無言でうなずいた。これには驚いた。さらに驚いたことに子供たちから次々と自然や日本の現状に対する意見が飛び交った。クマは、森を切り拓いた人間のせいで食料がなくて山から下りてきたのに、人間はクマが悪いといって殺してしまう、それはおかしい、など。自然界をテーマにした自作ソングをうたってくれた生徒もいる。自分を振り返ってみようという歌詞だった。今おかしくないかという意見が子供たちから本当に多数でた。納得できないニュースが最近やたら多いとか、その気持ちを忘れずに行動につなげてほしいと思った。ひとは人間だけでは生きていけない。私たちがいまなにをするべきか。それは子供たちがよく知っている。しかしそんな気持ちを実践に移せる場がないのが、日本最大のウィークポイントである。

いま日本は厳しい状況に置かれている。経済も、山も、子供も、天候も、政治も、人のこころも。意識に関わらずほとんどの人はそれに気づいている。その意識をあとは実践するだけになった。これからの時代に必要なものは、経済指標をテクニカルに分析する力より、もっと心身の延長線上にあるモノサシ。夏野塾をおえて、指標とするものを、子供たちから再教育されたことを知る。皆様いつも、ありがとうございます。

野びと塾 青山真虎


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